現場で使用する雑資材の発注を
『支店の担当部門が各作業所から注文を受け付けて、メーカーへ発注依頼のメールを送る』
という流れで回していました。作業所からの注文は Google フォームを使うなどして効率化に取り組んでいたのですが、それでも転記・確認・発注の業務が大変で面倒だという相談を受けました。
今回は、Google フォームで受けた注文依頼からメーカーへ送信できる注文票を作成して、その注文受付情報を支店の担当者にメールで通知するまでを、GAS(Google Apps Script)を利用して作成しました。
GAS を使えば Google 系サービスの多くは自動化ができるのですが、GAS を作ること自体が現場社員にはなかなか困難でした。それが、Gemini などの AI を利用して、やりたいことを伝えるだけで、GASコードを生成してくれるまでになりました。
本記事では、Google フォームの送信をトリガーに注文票の作成とメール送信、さらに受信したメールからワンクリックでメーカーへ発注依頼をかけるまでを作ったものを、AI を活用した点も含めて紹介していきます。
これまでのやり方と現場での工夫の限界
基本的には、各作業所が雑資材を直接購入することがほとんどですが、この会社では一部の雑資材が支店の部門を窓口に一括発注する方式で運用されていました。
はじめのやり方は、各作業所が注文票の Excel に必要事項を入力して、支店の担当部門へメールで送る形でした。支店側はそれを開いて内容を確認し、メーカーごとの注文票に起こして送る。よくある形かと思います。
ここで一度、作業所の入力負荷を下げることを目的として、作業所からの注文を Google フォームに変えたようです。
作業所は項目を選んで送信するだけになり、Excel を開いて様式を崩さないように入力する、というところからは解放されました。現場の工夫として、ここまではうまくいっています。
ただ、転記そのものがなくなったわけではなく、支店担当者に業務が移っただけでした。
フォームの回答が集まったスプレッドシートを見ながら、支店の担当者がメーカーごとの注文票に打ち直す。作業所はいくらか楽になったのですが、その分がそのまま支店の業務として積み上がってしまっています。
フォーム回答を確認して注文書に転記することは、1 件だけを見れば数分で終わる作業かと思います。ただし、管轄の全作業所から不定期で依頼があったり、時には件数が重なったりと作業量が読めないこと、さらには転記の入力ミスなどから注文の修正や現場への連絡など別の課題も生まれていました。
GAS を利用して変わったあとの姿
まずは、今回業務改善に向けて既存のGoogleフォームを活かしてGASによる各サービスを連携して作成したものを消化しいます。
作業所・支店・メーカーの 3 者がいて、支店の担当者は届いたメールを確認して送信するだけ、という形になりました。
作業所が触るのは Google フォームだけ
作業所側は、これまでと同じく Google フォームに入力して送信するだけです。商品名と数量、現場情報を入力するだけで注文依頼が吸うことになります。
[画像1]作業所が入力する Google フォームの回答画面(明細・単位のプルダウン・メーカーの選択)
支店には注文票が添付されたメールが届く
フォームが送信されると、送信をトリガーに注文票が自動で作られて、支店の担当者あてにメールで通知されます。注文票は PDF で添付され、明細はメールの本文にも展開してあるので、添付を開かなくても中身が確認できます。
注文番号も自動で採番されるので、支店側で振り直す必要はありません。
[画像2]支店に届く通知メール。注文票 PDF が添付され、明細が本文に展開されている
そのメールから、発注と修正依頼ができる
通知メールには、[発注する]と[現場に修正依頼]のボタンを置いてあります。どちらも、押すとメールが立ち上がるところまでです。送信そのものは人がやります。
[発注する]を押すと、メーカーあての発注メールが、あらかたの標準文が入った状態で立ち上がります。そのまま送ることができる様になっていますが、担当者が文面を直したり、現場の事情を補足で書き足したりすることもあるので、送信までは自動にしていません。
[画像3][発注する]を押して立ち上がった、メーカーあての発注メール
[現場に修正依頼]のほうは、注文を出した現場担当者の方あてのメールが立ち上がります。こちらも注文の情報がいくらか定型文で入った状態にしてあります。何の注文の、どこが不備なのかを伝えるためのものなので、そこから書き足してもらう前提です。
自動化しているのは、注文票を起こすところまで。文面と送信の判断は人に残す、という切り分けにしています。
Google フォームから注文票送付(発注)までの作業ステップ
作ったものの中身を、ざっと並べておきます。
- Google フォームの送信をトリガーに、GAS が起動する
- 注文票のテンプレート(スプレッドシート)を複製して、回答の値を差し込む
- PDF に書き出して、Google ドライブの保存先フォルダに置く
- 注文履歴を確認できるように、別の発注ログシートに追加する
- 支店の担当者あてに、PDF を添付した通知メールを送る
- メールの[発注する][現場に修正依頼]から、それぞれのメールを立ち上げる
設定したのは、メーカーの名簿・注文票のテンプレート・保存先のフォルダ・通知先のアドレスといったところです。GAS のコードや各設定の詳細については、別記事でまとめていきます。
支店・作業所との要件定義
どういう要件にする必要があるのかは、作業所、支店担当者がすでに持っています。そこで、まずは要件定義を詰めいていくことから始めていきます。
ただ、「どんな仕組みが欲しいですか」と聞いても、なかなか要件は出てきません。システムや自動化を作っていくとそもそもどういう情報が必要かを想像することが難しくなってしまいます。
そこで、私が間に入って、まずはこれまでの私の経験などから必要な機能と要件をまずはこちらから示して、それを叩き台に相談しながら決めていきました。
決まったことのうち、後から効いてくるものを挙げておきます。
- メールを立ち上げるところまでにする。送信は人がやる。
やはり、完全自動というものは理想ですが、現実にはなかなか難しいです。
ひとつはフォームの入力ミスが、そのまま社外への誤送信になってしまいますし、心理的なハードルもあります。また、それだけではなく要件を詰めていく中で、現場の搬入ルールなど特定の作業所ではありますが、フォームの項目に収まらない補足を担当者が書き足すことがあります。
送信まで自動にしてしまうと、こういった対応ができなくなってしまいます。「自動化なのに人を挟むのか」という話にはなるのですが、負担の本体は「転記」ことであって「注文内容の目視確認と作業所特性を考慮して発注のメール文面を整える」ことではありません。 - メーカーは名簿から選ぶ。
フォームに宛先の自由入力欄を作らないという形にしています。発注先が複数あるようでそこを作業所が選ぶことは可能と要件を確認しました。
自由入力欄を増やすとどうしても表記の揺れがでてしまいます。また発注となるとメーカー名とメールアドレスなどを紐付ける必要があります。 - 明細は 3 行で固定する。
Google フォームは回答欄は動的に増やすことは困難です。また、注文書を作成する時もページをまたぐようなレイアウトを調整するのは非常に手間がかかってしまします。
今回は提供した発注自動化のシステムを支点担当者の方が自らメンテナンスできるようにすることも含まれています。複雑になる要件(4品目以上の注文受付)は注文を2回に分けてもらうことを確認して、わかりやすさを重視しました。 - エラーは作った人にメールで飛ばす。
自動処理自体が何らかのエラーを出したときは必ず、支店担当者と私に通知が届くようにしています。
GASのエラーはコードベースのエラーになるので、解決のための判断が支店担当者には難しいです。頻繁に起きるようなエラーはありませんが、こういった点はすぐにサポートできる体制を取りました。
一方で、要件として挙がったものの、作らないことにしたものもあります。承認の履歴を画面で一覧したい、という話は出たのですが、発注ログのスプレッドシートを見れば足りるので、そこは作っていません。
要件を確認すると、将来の分析したいとかまだ使うかどうかもわからないような要件がたくさんでてきます。
こういったことは設計・計画が重要になり、後戻りできない建設業ならではの思考だと思います。もちろん設計、計画スタートで始めることは変わりませんが、必要になったらあとから追加できることを伝えて、まずは課題に感じていたことを解決する最小構成から始めていくことも重要もです。
次に活かせる!GAS の基本と AI 活用のレクチャー
作って渡して終わり。にはしないようにしています。
ひとつは、何かあったときに自分たちで直せるようにするためです。実際には、自分たちでコード修正まではできるスキルは身に着けなくても、「ここをこう変えてほしい」を分かりやすく伝えてもらえる状態にはしておきたい。そのために、GASがそもそも何をしているものなのかを、ざっとレクチャーする時間を取りました。
もうひとつが、次に活かしてもらうためのレクチャーです。
GASでのイメージができれば、課題ややりたいこと自体は現場や支店の担当者のほうが持っているし、どういう姿にしたいかイメージがあります。これまではそれをどう実現すればいいのかわからないという現状でした。これは特別なことではなく、例えば総合仮設計画図の立案だったり、足場の強度計算書作成といった建設業従来の業務であっても始めてやる人からすると何から着手していいかわからないと手が止まってしまいます。
そこで、まずは今回の課題であればGASを組み合わせれば解決できそうということを事例として伝えました。さらに、今はAIによってGASコードも提供してくれる方法があることも伝えました。
やはり、ここも建設業脳になってしまい、はじめはこの機能が必要、こっちの機能も必要、エラーが出たときにはこういう対処が必要、こんな個のもあったら便利かも、、、
と設計だらけになって手を付けれないということが実際にありました。
ITの業界に入ってくると後戻りはもちろん大変ですが、建設業のような絶対無理、大幅なロスが生じるということ少ないです。AIが活用できるようになったことにより、開発にかける人件費もだいぶ抑えられるようになりました。
まずは、動くものを作ってみて、それを見てから改善を加えていくマインドを現場にもってもらうところまで支援しました。
現場の課題が手軽に解決できるという経験があれば、現場社員自ら「あの業務にも使えるのではないか」と思いつくようになります。また継続的に支援しているので、そのときに、難しいものは一緒に伴走しますし、まずは自分でやってみようという気持ちが芽生えるきっかけを作りたいと考えています。
現場業務で同じ仕組みを利用できそうな場面
今回作ったものは、そのままどの作業所にも持っていけるという類のものでは無いかもしれません。
ただ、形としては汎用性があります。「フォームで受けて → 定型の書類を起こして → 決まった相手に送る」という業務であれば、同じ組み立てがそのまま当てはまります。
- コンクリート打設予定の一斉通知(数量・ポンプ車の台数・作業員の人数を各社へ)
- 作業間連絡調整書の取りまとめ
- 資材の搬入予定の届け出
- 協力会社からの各種届出の受付と、受理の返信
いずれも、テンプレートと宛先の名簿を差し替えれば形になります。まず入れてみるなら、社外にメールが出ない範囲(フォーム → 書類 → 自社のドライブに保存)から動かしてみるのがよいかと思います。
おわりに
作業所からの資材注文を Google フォームで受けて、注文票の作成から支店への通知、メーカーへの発注までをつないだ事例でした。
現場の工夫で Google フォームまでは進んでいたのに、転記だけが支店に残っていた。そこを GAS で埋めただけ、といえばそれだけの話です。ただ、こうした「あと一歩が埋まらない業務」は、どの作業所にもいくつかあるのではないでしょうか。
これまでは、GAS を書けることが前提になっていたので、埋めるところまで手が届きませんでした。そこが AI で変わってきています。まずは身近な繰り返し作業から、一度整理してみてください。


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